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資金計画

資金・収支計画書作成

ポイント

まず
「所要資金計画」

「資金調達計画」

「収入予測計画」、

「費用予測計画」、

「収支差額(利益)計画」、

を作成します。

開業直後の6ヶ月~1年程度は赤字収支になる場合が多く、その赤字期間、家族の生活費や銀行への支払利息などが不足とならないよう見込みをつける 必要があります。

医院開業における資金計画はこの6種類を作成することですが、計画の中身は開業スタイルや自己資金によって大きく違ってきます。

自己資金・家族からの資金で足りない部分を金融機関から借り入れます。

1. 医療機器および什器・備品購入計画

医療機器・レセコン・電子カルテ・机・棚などの器具備品の購入資金計画を策定します。

とくに医療機器については、診療科目や診療方針、提供サービスのレベルにより、必要とされる種類や数に違いがあるものの、標準的な開業医の収益水準からみれば、だいたい2000~3000万円程度を目安に購入品リストを作成し、予算化していくことでしょう。

計画の草案ができた時点で医療機器業者や事務機器業者からの見積もりの提出を受けて詳細な予算化へ進みます医療機器や備品、設備をリスト化し、業者選択・価格交渉になります。 具体的な価格交渉は全体の資金計画が完成し、銀行融資も確定した後にじっくり行えば十分間に合います。

2. 立ち上げ運転資金計画(諸手続き費用、広告宣伝費、医師会費など含む)

立ち上げ運転資金は、とくに開業後3~6ヶ月程度の赤字期間を資金的に乗り切るための忘れてはならない蓄えです。

例えば、開業日までの準備期間に発生する借入金の返済、水道光熱費、人件費、リース料、生活費など、また、開業後には2ヶ月遅れでしか入金されない診療報酬に対する人件費や医薬品費用の支払い分などがこの運転資金に含まれます。

さらに、この立ち上げ運転資金計画には、土地や建物、医療機器や什器備品での予算計画に含まなかった、広告宣伝費、医師会加入費などの諸経費もここでは予算化します。ケースによっても差がありますが、具体的な金額の目安としては、開業3ヶ月程度の生活費と職員の人件費などの費用200万円、開業後6ヶ月程度の事業の赤字補填費用分400万円程度、それに開業準備にかかわる広告宣伝費、医師会加入費などを含め、およそ600~1000万円程度の立ち上げ運転資金が必要となります。

<立ち上げ運転資金に含まれる主なその他の開業所要資金の内容>

  • 開設前の借入金の支払利息
  • 不動産取得などにかかる公租公課
  • 消耗品、医薬品購入費(医療用、事務用)
  • 職員募集費
  • 医師会入会金
  • 保険料(生命保険、火災保険)
  • 引っ越し、荷物搬入費用
  • 地鎮祭、棟上式、竣工式、完成披露費用

など。

 

3. ビルテナント開業の所要資金計画

一戸建て開業に比べ、ビルテナント開業の場合は土地と建物にかかる費用を大幅に抑えることができますが、オーナー側と賃貸借契約を締結する際に、保証金や敷金などの名目で月額賃料の数ヶ月分のまとまった資金が費用になります。また、内装設備工事には意外なほど費用がかかるので、ビルテナント開業だからといっても、きちんとした予算化、資金計画は必要不可欠です。

<所要資金の標準モデルケース:ビルテナント開業>

    1. テナント保証金                =300万円
    2. 内装設備工事費              =1500万円
    3. 医療機器・什器備品             =2000万円

    4. 立ち上げ運転資金(広告宣伝・諸費用含む)    =700万円

    合計   4500万円
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資金調達

ポイント

所要資金の計画ができあがったら、続いてその必要資金をどこから調達するかという資金調達計画の策定を行います。医院経営には医療法人で行う場合と個人事業として行う場合がありますが、多くの医院開業では、まずは一旦個人事業として開業したうえで、経営面で安定した2~3年後に医療法人へ昇格するケースが多いです。したがって、現実的には法人事業として広く出資金を集めることはできず、個人事業として院長個人の無限責任のもとに資金を集め、開業することになります。

具体的には、

自分の預貯金か資産を活用する、

親や親戚から資金や資産活用の支援を受ける、

リースを活用する、

公的、民間を含めた金融機関から融資を受ける の4つの方法で資金を調達していきます。

1. 資金調達計画

開業資金を、すべて自分の預貯金でまかなうことができればそれにこしたことはありませんが、開業アンケート調査などでは、多くの勤務医は開業に出せる自己資金が2000万前後という結果で、全体の総所要資金の標準モデルである1億2000万~1億5000万円との間に大きな乖離が生じています。

したがって、開業資金をすべて自己の預貯金でクリアできるケースはきわめて稀で、金融機関からいかに上手に資金を借りるかが最大の課題の一つとなっています。

さらに、医療機器など減価償却の対象となる費用の調達先としてリースの活用が挙げられます。リースは陳腐化しやすい医療機器などを整備する手段としてたいへんありがたい仕組みなのですが、その代金を購入時にやり取りすることがないので支払い負担の意識が薄くなり、無計画で安易なリースの乱用は、開業後の資金繰りを圧迫し経営的にも危険になることがあるので、全体計画に基づいて適切な活用が肝要です。心構えとしては、リース会社は機械などモノを貸してくれるところ(レンタル)というよりは、金融機関で、銀行と同じような資金を貸してくれるという意識をもつほうが金融知識の浅いドクターの場合は健全でしょう。

このように土地や建物など投資費用が大きくなる一戸建て開業では、金融機関からの融資、リース活用のいずれの方法も、多くのケースで活用されており、開業準備の基礎知識は、資金調達方法を学ぶことといっても過言ではないほど、もっとも重要なテーマになっています。

2. 融資を受けられる金融機関

多くの開業ケースでは国民生活金融公庫と銀行や信用金庫を比較検討(場合によっては両方から借りるケースもあります)することなります。リースを利用する場合もあります。

国民生活金融公庫の公的融資制度であり、民間の銀行・信用金庫などとは融資精度が相違します。

まずは資金計画を立案し、具体的に金融機関と交渉していくのが一般的な資金調達の流れです。

 

収支計画詳細

ポイント

開業後、患者がどのくらい集まるのか?収入は十分か?費用と利益の見込みは?いつ頃までに経営を安定させることができるか?...は開業希望医にとって最大の関心事です。公定価格である保険診療を中心とする医院では、単価を自由に設定できず、一定以上の患者数の確保が収入面では必要不可欠です。

具体的には統計による診療単価に来院患者数見込みを掛け合わせ収入見込みを立て、また、費用も診療科目別に統計指標があるので、特別な場合を除いてこの経費率を使って自院の支出を見込んで利益を算出します。

1. 医業収入計画

首尾よく開業所要資金を調達でき、スタートを切ることができても、その後の経営の安定には診療にかかわるさまざまな費用を支払い、また、銀行などへ元金と利息をきちんと返済し、さらに、生活費と将来への蓄えを確保しなければなりません。とくに、公定価格の保険診療を中心とする医院経営では一定以上の患者数の確保に依存せざるを得ず、また、患者数が十分に確保できたとしても、過度な費用を支払っていては手元に利益は残りません。

当たり前のことですが、開業前にはこれらのきちんとした収支計画なしに開業準備は始まらないのです。また、融資を行う金融機関側も、たとえ貸し出し金額に対して十分な担保があるからといっても、そもそもの事業計画の妥当性が低かったり、患者数の見込みが甘かったりしては融資に応じてはくれないので、収支見込みの算出方法を正しく理解し、かつ、机上の計算と実態との整合性を見極める力を養うことがリスクの少ない開業には不可欠です。

具体的には、収入のほとんどを医療保険の診療報酬でまかなう医院においては、「1日に来院するであろう見込み患者数×標準的な保険診療単価」という計算式で収入計画を立てていきます。例えば、内科の無床医院での収入計画では、患者1日当たりの収入単価は「社会医療診療行為別調査報告」より平成15年6月診査分で@6160円と報告されているので、開業1ヶ月目の平均来院患者数を1日当たり10人だと見込んだ場合、診療単価6160円×1日の平均来院患者10人×1ヶ月の診療日20日(実診療日で設定する)≒1ヶ月の収入約123万円というように算出します。

このように、診療単価は根拠のある一定の統計数値を用いるため、収入総額は見込むことができる来院患者数で大きく変わってきます。また、診療日も半日休診日をきちんと計算しないと実際よりも診療日数が多くなったりして、銀行などから甘い計画と指摘されることもあります。また、患者数の伸びも、厳しい開業市場を反映して、すぐに十分な患者数が来院するほど楽観的な計画は立てづらい。実際には、おおむね1年~1年半をかけて目標患者数に達するような患者増加推移で計画するのが現実的と言えます。最終的な収支計画は、初年度は1ヶ月単位で患者数に診療科目別の単価を掛け合わせて収入総額を求め、2年目以降は1年単位で計算し、少なくとも向こう5年先までの見込みは計画として示すべきでしょう。

2. 医業費用計画

収入があれば、当然それにともなう費用が発生します。一般的な無床の診療所で医療サービスを提供する限り、医業費用は収入に対して、おおむね診療科目別に一定の値を示すことから、費用計画も収入計画策定の場合に活用したのと同じように、あらかじめ公表されている経営指標の統計データに基づいて算出するのが一般的です。

具体的には、厚生労働省が行う医療経済実態調査による経営指標のうち、収入に対する費用割合を示した「個人立一般診療所1施設当たりの収支額、診療科別(無床)」を活用するとよいでしょう。この統計データ一覧表には、各診療科目の1ヶ月の医業収入に対しての医業費用が平均してどの程度支出されたかが金額と比率で記述してあります。